第25回北海道生活科・総合的な学習教育研究大会 釧路大会 報告


【開会式・研究提言】
 荒天のため開催が心配された釧路大会でした。持ち込み授業を行うことができないなど影響は出ましたが、開催することができました。大室道夫大会長の挨拶から、スタートとなりました。「生活科」や「総合的な学習の時間」が学力向上につながるため、これからますます大きな役割を担うことになるという話がありました。研究提言では、3人の研究部長が提言に立ち、道の研究・釧路地区の研究・阿寒小学校の研究について説明がありました。今回の大きな主張点のひとつが、その単元における子どもたちの姿、発言、記述などを想定し整理した「ルーブリック」を事前に作成するということでした。

【1年生 生活科 授業】
 1年生活科は、秋のものでつくった自分のおもちゃやもので、友だちに遊んでもらい、さらに工夫を加えるための話し合いをもつという授業場面でした。短い遊び時間の中で感じた、自分がつくったもので遊んでもらう喜びと、遊ばせてもらった喜びを、言葉にして交流し合う子どもたち。そんな中でのちょっとした疑問や残念な想いを丁寧に拾い上げ、次時の活動意欲に繋げていく教師の関わりが温かく、素敵でした。

【2年生 生活科 授業】
 まち探検に出かけ,まちの「すてき」を見つけてきたことをグループで交流する授業でした。グループごとに1枚探検した地域の白地図を配付し,見つけた「すてき」ポイントにシールを貼り,自分たちの発見を可視化していきました。最後には学級全体の交流になり,見つけてきたすてきが「人」「もの」「場所」の3つにカテゴライズされることを,先生が「すて木」という表現を使って木になるよう,板書を構造化していました。

【3年生 総合的な学習の時間 授業】
 3年生の総合的な学習の時間の単元は「知り隊!阿寒川のひみつ」でした。近くに流れる「阿寒川」の生物や水質などの調査活動を中流域・下流域・上流域で行い、見えてくる環境問題について考えていく学習です。本時は、阿寒川の中流域のよい点と問題点を事前に記入した「くわシート」に書かれていることをもとに、全体交流を行い、次の学習への見通しをもつという授業でした。これまでに、川での豊かな体験活動が行われてきたのがよく分かるものでした。子どもたちは、川での体験をもとに、よい点・問題点をどんどん出し合いました。同じ、阿寒川中流域ですが、個人の認識の違いにより、「ゴミが多い。」と感じる子、「ゴミが少ない。」と感じる子がいたり、「ウチダザリガニ」がいることに対する考えの違いなどが話し合われました。

【4年生 総合的な学習時間 授業】


 4年生総合「光陽探偵団が行く!ターゲットの思いを追え」は、あいにくの天候で光陽小学校が臨時休校となり、授業公開を行うことができませんでしたが、教室にはボーン図やYチャートなどにまとめられたこれまでの学習の足跡が掲示され、子どもたちのこれまでの学習の様子を垣間見ることができました。授業分科会では、授業者の春名先生から、この授業の動機付けについてや子どもたちの授業での様子、これまでの学習の過程や今後の展望をお話しいただきました。

【5年生 総合的な学習の時間 授業】
 「お年寄りを笑顔にするために大切なことを考えよう」という課題で,シンキングツールの「Yチャート」を活用して,自分たちの活動を振り返りました。良かった点と問題点を比較することで,お年寄りを笑顔にするための大切なことを協同的な学習の中で気づく姿が見られました。本時の学習を通して,子どもたちが次の活動の見通しをもち,次時への意欲を高めていました。真剣に授業に臨む子どもたちが見られた,とても素敵な授業でした。

【6年生 総合的な学習の時間 授業】
 課題は「阿寒地区をさらに盛り上げるための方法を考えよう」でした。その課題に迫るために、みんなが考えた方法がどの程度街を盛り上げられるか数値化して示していました。児童の実態を考慮し、座標軸の横軸だけで話し合いを進めていましたが、縦軸の「できそう」「むずかしそう」を付け足したことで活発な動きが出てきたように思います。本時を始めから『実現するにはどうしたらよいか』を視点に展開できれば、スムーズに進めることができたかと感じました。大変勉強になりました。ありがとうございました。

【授業分科会T <生活科・低学年>】
 交流の場が「気付きの質」を高めることにつながっていたか,表現の場は,気付きを明確にするものになっていたか,ということを柱に話し合われました。交流したらどんなすてきなことがあるのか子供たち自身がどれだけ感じていたか,本時の活動に対する必然性についての話が出ました。これからの生活科は原点に戻り,子供たちの思いや願いを大切にしながら,子供にとってドラマを生む単元のデザイン力が求められるというまとめになりました。

【授業分科会U <総合・中学年>】
 3年生の授業『知り隊!阿寒川のひみつ』について、久末奈々江先生の授業を中心に話し合われました。『阿寒川』自体が大変いい教材(フィールド)であるため、何度も直接体験することができ、それによって自分達の川という意識で活動できたこと、シンキングツールの効果的な使い方、『ルーブリック』と評価とのかかわりについて意見が出されました。4年生の授業は臨休のため残念ながら実施できず、授業者の春名先生は大変残念な様子でした。

【授業分科会V <総合・高学年>】
 授業分科会Vでは,『シンキングツールの効果的な活用』と『協同的な学習活動』を柱に活発な討議が行われました。本時で活用したシンキングツールは適切だったのか。協同的な学習活動によって子どもたちは新しい視点をもったか。など子どもの姿を通して,お互いに語り合う密度の濃い分科会となりました。今後の授業に生かせる具体的な事例もたくさん出され,実り多い研修でした。

【課題別分科会T <渡島・札幌>】
 渡島地区は「人との関わりを通して、課題を主体的に解決していくための工夫」というテーマで2年生の「みんなで作ろう知小おもちゃフェスティバル」の実践が発表されました。繰り返しかかわり、気づきを深める単元構成の大切さについて説明がありました。年長の子どもたちを招待しておもちゃフェスティバルを行うことが目標となります。この目標に向かう中で気づきが深まるのです。気づきの深まりは3段階となっています。1 おもちゃを工夫してつくる楽しさや、みんなで遊ぶ楽しさを知る「気づき」2 1年生におもちゃで遊んでもらい、身近な人とかかわる楽しさやさらなる工夫を知る「気づき」1年生にも評価者としての役割がある。3 年長児を招待してフェスティバルを作り上げることで相手を喜ばせる難しさや楽しさを知る「気づき」この様に活動を何年間も連続させることが重要であるとのことでした。

 札幌地区は「連続する活動や体験の中で、思考をめぐらせ気付きの質を高めるかかわり」というテーマで1年生の「めざせ がっこうめいたんてい」の実践が発表されました。これは、学校生活を支えている人々に関心をもち調べていく学習です。「名探偵になろう!」というのが単元を貫く軸となっています。「よく見る」「情報を集める」「聞き取る」ということを「名探偵の技」と定め調査活動をしていきます。そして、「探偵手帳」をもたせることで、子どもの意欲が高まったとのことでした。そして、情報がいっぱいになった「探偵手帳」に教師が「先生シール」を貼っていきます。シールは3種類で、a…よく見て分かった b…分からない、不思議に思ったc…聞いて分かったとなっています。また、「探偵手帳」を相互評価する場面では、「すてきシール」を貼りながら交流を行いました。友達のよい情報に対して貼っていくのです。人について調べる活動に浸り楽しめる手立てをとりながら、「学び方」を身に付けさせていくという学習でした。

【課題別分科会U <旭川・後志>】
 気がつけば、当たり前と思って語り合っていたことが、20代の会員にとっては何だか難しい、よく解らない話になっていた…、そんな現状への反省から授業が創られたという提言でした。旭川地区の研究部を中心とするメンターチームが、初任の教師の初めての総合の単元を構成しました。授業者のために授業づくりの「基礎・基本」を一つ一つ押さえていったことが、地区会員全体の共通理解を深めることにもなりました。


 後志地区では、「泊村で子どもたちが暮らしていくには、村を大切にする人材になってほしい」「泊村もいいぞと思えるような大人に」との担任の思いがつまった、授業実践の提言でした。求められる教師の力は「情熱」「確かな力量」「総合的な人間力」との助言がありました。地域や社会と連携できる教師が求められるこれからの時代、土岐教諭の実践では、まさにこれからの教師が大切にしたい、地域との関わり方が示されていました。

【課題別分科会V <上川・函館>】
上川地区は、『「共生」ってなんだろう?』をテーマに、5年生が行った福祉の実践を発表しました。アイマスクや車いすなどの疑似体験や「しょうがい」をもつ方の講演を聴いただけでは「しょうがい」に対する理解は深まっても「共生」という意識は育まれないだろうということから、「しょうがいをもつ人たちと一緒に楽しむ」ことをねらいとして、単元を構成しました。3人のGTと出会い、ふれ合うことで「人」への魅力を感じていった子どもたちは、本当の意味での「共生」を学習の中で意識することができただけでなく、学習を支えてくださったGTにも喜んでいただける実践とすることができました。

 
 函館地区の実践は,「函館のいか再発見!」と題して,3年生の子供たちが函館の「いか」が郷土の食や観光の場で発展してきた経緯,「いか」に携わる人々の思いについて学んだようについての発表でした。質疑では「協同」「協働」の違いや思考ツールの活用法についての話題が出ました。 思考ツールはあくまでも情報を整理・分析し,子供たちの思考が深まるための手立てであり,万能ではないこと,総合的な学習の場面だけでなく,他教科でも活用できるようなカリキュラム・マネジメントの必要性が話されました。

【課題別分科会W <札幌・オホーツク>】
 札幌地区では、5年生で地域を学習対象にし、体験活動を言語化することで、新たな課題を発見し、協働的な学びにつなげようという提言でした。参加者からは、2年生の生活科のまちたんけんとのかかわりや、その時に得られた人とのつながりについての継続や、まちのよさからスタートするのではなく、時計台の実践のように、がっかりなことから見つめなおす方法もあるのではないか、という意見が出されました。

 
 オホーツク地域の特産物である「たまねぎ」を栽培し、対象に継続してかかわることで愛着を持つことができ、かかわりが深まることが探究的な学びとなり、農家の方などの人から学ぶことが協同的な学びになるという提言でした。参加者からは、ゲストティーチャーを招く場合の注意点やその時間の展開について、野菜等を栽培するなど、長期的に課題意識を継続させる方法などについて質問や意見が出されました。

【講演会】
 「新しい学習指導要領の方向性とアクティブラーニング」                         講師 文部科学省初等中等局視学官 田村 学 氏   新しい学習指導要領の方向性の話がありました。生活・総合の学びを全教育課程に広げていくことになるとのことです。「生活・総合を中心に教育課程がくまれていくと言っても過言ではありません。」という心強い言葉もありました。前回の改訂の時には、逆風が吹いており、学力低下の元凶のように言われた生活・総合でしたが、かなり立場が変わってきました。 アクティブ−ラーニングについては、誰もが活動的な学習というイメージをもちます。問題はどこがアクティブかということです。大切なことは、脳が活性化しているかどうかであるというお話でした。形式や形態ではなく、アクティブな状態で学んでいるかどうかが大切というお話でした。今後、釧路地区で講演記録をアップしていきます。お楽しみに!!